借地の実家を相続したら?売る・返す・解体するの選び方と地主さんとの話し方【稲沢市の実例つき】

親の家を相続したら、土地は地主さんのもので、建物だけが親のものだった。
借地の家を相続すると、こういう状況から始まります。
「地主さんに何を言われるんだろう」「この古い家、どうしたらいいの」と、手が止まってしまう方は少なくありません。
この記事では、借地の家を相続したときに最初に確かめることと、家の行き先の選び方をまとめました。
後半では、稲沢市で借地に建つ築50年の家を、地主さんに返すまでお手伝いした実例も紹介します。

借地の家とは?土地と建物の持ち主が別々の家

借地の家とは、他の人の土地を借りて、その上に自分の家を建てている状態のことです。
土地を借りる権利を「借地権(しゃくちけん)」といいます。
土地の持ち主を「地主さん」、土地を借りている側を「借地人(しゃくちにん)さん」と呼びます。
借地人さんは、土地を借りる代わりに、地主さんへ毎月や毎年「地代(ちだい)」を払います。
親が借地人さんだった場合、相続で引き継ぐのは「建物」と「土地を借りる権利」の2つです。
土地そのものは、相続しても地主さんのままです。
相続したら、まず確かめる3つのこと

借地の家の行き先を考える前に、手元の書類で次の3つを確かめておくと、その後の話がずっと進めやすくなります。
- 土地を借りたときの契約書(土地賃貸借契約書)
- 地代をいつ、いくら、誰に払っているか
- 建物の登記(法務局に記録された名義)が誰になっているか
1. 土地を借りたときの契約書
契約書には、借りている期間、地代、返すときの条件などが書かれています。
とくに見ておきたいのは、「返すときは建物を壊して更地にする」といった、返し方の決まりです。
古い借地だと、契約書が見つからないことも珍しくありません。
その場合は、地代の領収書や通帳の振込記録、地主さん側の控えが手がかりになります。
2. 地代の支払い
親が地代をどう払っていたかを確かめます。
相続の手続き中でも、地代の支払いは止めずに続けておくほうが安全です。
地代を払わない状態が続くと、それを理由に地主さんとの関係がこじれることがあるからです。
3. 建物の名義

建物の登記は、法務局で「登記事項証明書」を取れば確認できます。
2024年4月1日から、相続で不動産を受け継いだら、そのことを知った日から3年以内に名義を変える登記(相続登記)をすることが義務になりました。
借地の上の建物も対象です。
2024年4月1日より前に相続した不動産で、まだ名義を変えていないものは、2027年3月31日までに登記をする必要があります。
正当な理由なく登記をしないままだと、10万円以下の過料(行政上のペナルティのお金)の対象になることがあります。
すぐに遺産の分け方が決まらないときは、「相続人申告登記」という簡単な手続きで、ひとまず義務を果たしたことにできます。
地主さんへの連絡
3つを確かめたら、地主さんに相続があったことを伝えておきます。
地代の振込先や、これからの連絡先を確認するためです。
この時点では、家をどうするか決めていなくてもかまいません。
相続なら、地主さんの許可も名義変更料も原則いらない

ここで不安になる方が多いのが、「地主さんの許可がいるのか」「名義変更料を払わないといけないのか」という点です。
一般的には、相続は借地権を「売る・譲る」ことには当たらないとされています。
そのため、相続で借地権を受け継ぐことに地主さんの承諾はいらず、名義変更料(名義書換料)も原則として払う必要はないと考えられています。
ただ、遺言で相続人以外の人が借地の家をもらう場合などは、扱いが変わることがあります。
地主さんから名義変更料などのお金を求められたときは、その場で払わずに、一度専門家に相談してください。
借地の家の行き先は4つ|買い取り・返す・売る・まとめて売る

借地の家の行き先は、大きく分けて次の4つです。
| 行き先 | どんな方法か | 向いているケース |
|---|---|---|
| 地主さんに買い取ってもらう | 建物と借地権を、地主さんに買ってもらう | 地主さんが土地を自分で使いたい・売りたいと考えている |
| 建物を壊して地主さんに返す | 解体して更地にし、借地の契約を終わらせる | 建物が古い/契約書に「更地で返す」とある/買い手が見つかりにくい |
| 第三者に売る | 地主さんの承諾をもらって、借地権付きの家として他の人に売る | 建物がまだ使える/駅や生活の便がよい場所 |
| 地主さんの土地とまとめて売る | 地主さんの土地(底地)と借地権をセットで第三者に売る | 地主さんも土地を手放したいと考えている |
どれがよいかは、地主さんの考え、建物の状態、契約の内容で変わります。
一概には言えませんが、いきなり1つに決めず、4つを並べて比べるのが近道です。
地主さんに買い取ってもらう

地主さんにとっても、土地が自由に使えるようになるので、話がまとまれば一番すっきりする方法です。
ただ、地主さんに買う気持ちやお金の余裕がなければ成り立ちません。
後で紹介する実例でも、買い取りの話は出ましたが、地主さんは買いたくないというお考えでした。
建物を壊して地主さんに返す

古い借地の契約書には、「返すときは建物を壊して更地にする」と書かれていることがよくあります。
この場合、解体の費用は借地人さん側が持つと決まっていることが多いです。
建物が古く、そのままでは買い手がつきにくい家では、現実的な選択肢になります。
第三者に売る

借地権付きの家として、他の人に売る方法です。
この場合は、地主さんの承諾をもらわなければなりません。
承諾をもらうときに、承諾料というお金を地主さんに払うことが多いです。
地主さんが承諾してくれないときは、裁判所に承諾の代わりになる許可を出してもらう手続きもあります。
申し立てる先は、土地がある場所の地方裁判所で、地主さんに不利にならないことが許可の前提になります。
この手続きでは、許可と引き換えにお金の支払いを求められることがあります。
また、同じ手続きの中で、地主さんが「それなら自分が買う」と申し出ることもできます。
地主さんの土地とまとめて売る

借地権だけ、地主さんの土地(底地)だけでは買い手がつきにくくても、セットにすると普通の土地付きの家として売りやすくなります。
地主さんと借地人さんの両方が手放したいと考えている場合に、よく検討される方法です。
売れたお金をどう分けるかは、話し合いで決めます。
実例:借地に建つ築50年の家を、地主さんに返すまで

ここからは、当社がお手伝いした稲沢市の実例です。
この方は相続ではなく、十数年前に借地権付きの家を購入されていました。
ただ、借地の家を手放す流れは、相続した場合とほぼ同じです。
相談のきっかけ

家は築50年を超える木造2階建てで、空き家になっていました。
借地の家を買ったときの稲沢の不動産会社に連絡しても返事がなく、どこに相談したらいいか分からない状態でした。
最初の打ち合わせで、やることを次のように整理しました。
- 借地の契約を終わらせる
- 土地と建物の権利関係を確かめる
- 建物を解体する(解体業者さんの見積もりを取る)
- 隣の土地の持ち主さんと調整する
- 解体後に、建物がなくなったことを登記する(滅失登記)
「更地で返す」の「どこまで」が決まっていなかった

契約書には、返すときは建物を壊して更地にすると書いてありました。
預けていたお金(敷金や保証金)はありませんでした。
困ったのは、「更地で返す」としか書いておらず、どこまで壊せばいいのかが分からなかったことです。
土地の境界(隣の土地との境目)が決まっていなかったんですね。
そこで地主さんに、どこまで壊せばいいのか示してほしいとお願いしました。
地主さんからは、「測量をするので待ってほしい」というお返事でした。
測量を待つ間の地代は止めてもらった

ここで私は、地主さんにこうお伝えしました。
「地主さんのご都合で待つのですから、その間の地代は止めていただけませんか」
待っている間も地代を払い続けるのは、借地人さんにとって筋が通らないと考えたからです。
地主さんにもご理解いただき、ご相談から約2週間で、借地の契約を話し合いで終わらせる書面を交わしました。
書面には、「地主さんの測量で境界が決まるまで、明け渡しを待つ」「契約が終わった日から後は、地代はかからない」ことをはっきり書いています。
口約束で済ませず、書面に残しておくことで、後から「言った・言わない」になるのを防げます。
壊す範囲を、現地で地主さんと決めた
その後、地主さん側の方と現地で立ち会い、壊す範囲を一つずつ確かめました。
隣の土地の持ち主さんのブロック塀やフェンス、土留め(土が崩れないようにする壁や杭)は残すことにして、その範囲を図面にした合意書を作りました。
解体業者さんに「どこまで壊すか」を正確に伝えるためにも、この図面が役に立ちます。
解体業者さん3社の見積もりと、隣の家の協力
解体は、業者さん3社に現地を見てもらい、見積もりを比べました。
3社の見積もりは、税込みで約136万円から198万円まで、62万円の差がありました。
現地は通路の幅が一番狭いところで1.7メートルしかなく、重機を入れるには隣の土地の持ち主さんの協力が必要でした。
さらに、水道の管が他の人の土地を通っていることも分かり、その扱いも隣の方と話し合いました。
解体業者さんの選び方と見積もりの中身は、こちらの記事で詳しく書いています。
→ 稲沢市の解体工事で62万円の差!3社相見積もりで分かった適正価格の見極め方
解体、滅失登記、引き渡し
解体工事は約10日で終わりました。
建物を壊したら、その日から1か月以内に「建物滅失登記」をしなければなりません。
土地家屋調査士さんの見積もりは、4万4,000円(税込み)でした。
最後に地主さんと現地で立ち会い、引き渡しを終えました。
ご相談から約4か月です。
この方からいただいたお言葉は、こちらで紹介しています。
→ 稲沢市で借地に建つ築50年の家の解体をサポート|お客様の声
借地の相談は、時間をかけて向き合う仕事
借地の家の相談は、決まった流れで進む普通の売買とは違います。
地主さんの考えを聞き、契約書を読み、隣の方とも話し、一つずつ決めていく仕事です。
私も以前、たくさんの物件を決まった流れで進める会社にいたので分かるのですが、1人で20件、30件を担当していると、こうした話し合いに時間を割くのは難しいんです。
会社が悪いわけではなく、役割が違うんですね。
当社は、この時間のかかる部分を、一つずつお手伝いしています。
費用のめやす
借地の家の行き先によって、かかるお金が変わります。
- 解体費:建物の大きさや前の道の広さで大きく変わります(実例では木造2階建てで約136万〜198万円の見積もり)
- 建物滅失登記:土地家屋調査士さんへの報酬(実例では4万4,000円)
- 相続登記:司法書士さんへの報酬と登録免許税
- 承諾料:第三者に売る場合に地主さんへ払うことが多いお金(金額はケースによります)
相続税の計算では、借地権も財産として数えます。
借地権の評価は、その土地を自分のものとした場合の評価額に、「借地権割合」をかけて計算します。
借地権割合は、国税庁が毎年公表している路線価図で、道路ごとに付いているアルファベットで確かめられます。
やらないほうがいいこと

借地の家で、後から困りやすいのは次の3つです。
- 地主さんに話す前に、解体や売却を進めてしまう
- 地主さんに言われた金額を、その場で払ってしまう
- 地代の支払いを止めたまま、放っておく
どれも、地主さんとの関係をこじらせる原因になります。
先に話して、書面に残す。
これが借地の家を手放すときの基本です。
よくある質問
契約書が見つからない場合はどうすればいいですか?
地代の領収書や通帳の振込記録、地主さん側の控えが手がかりになります。
書面が見つからなくても、地代を払って建物を建てていれば、借地の関係があると考えられる場合があります。
まずは手元にある資料を集めてみてください。
地主さんから名義変更料を請求されました。払わないといけませんか?
相続で受け継いだ場合は、原則として払う必要はないと考えられています。
ただ、遺言で相続人以外の人がもらった場合など、扱いが変わることもあります。
その場で払わずに、一度ご相談ください。
建物がかなり古いのですが、売れますか?
物件によりますが、古い借地の家は、そのままでは買い手が見つかりにくいことが多いです。
地主さんへの買い取りの相談や、解体して返す方法も含めて比べてみるのがおすすめです。
兄弟で相続しました。どう進めればいいですか?
まず、建物と借地権を誰が受け継ぐかを話し合って決めます。
そのうえで、相続登記をして、地主さんに連絡します。
話し合いがまとまらないときは、先に「相続人申告登記」で登記の義務を果たしておく方法もあります。
反対に、地主側の土地(底地)を相続した場合は?
借地人さんがいる土地は「底地(そこち)」と呼ばれ、相続税の評価では借地権の分を差し引いて計算します。
手放すときは、借地人さんに買ってもらう、借地人さんと一緒にまとめて売る、といった方法があります。
当社には地主さん側からのご相談もありますので、こちらもお気軽にどうぞ。
まとめ

借地の実家を相続したら、次の順で進めます。
- 契約書・地代・建物の名義を確かめる
- 地主さんに相続を連絡する
- 行き先は4つから比べて選ぶ
- 地主さんと先に話して書面に残す
- 売りたい・手放したい時は早めに相談する
借地の家を売りたい、手放したい。
でも、何から始めればいいか分からない。
そんな段階からでも、ご相談ください。
なお、本記事の税金に関する記述は一般的な解説です。個別のケースについては、税理士または所轄の税務署にご確認ください。
