実家を売る決断ができない方へ|後悔しないために整理すべき3つの判断基準

稲沢あんしん不動産の佐藤です。
この記事は、空き家になった実家を「売るべきか」「まだ持っておくべきか」と迷っている方に向けて書いています。
「頭では分かっている。でも、踏みきれない」
長年、相続や空き家のご相談を受けてきて感じるのは、ご実家の売却を決断できない理由は、論理的なことではないケースがほとんどだということです。税金や費用の問題ではなく、「思い出のある家を手放す」という感情が足を止めている。あなただけではありません。皆さんそこで立ち止まっています。
この記事では、私が実際に担当したお客様の事例をもとに、実家を手放すかどうか迷ったとき整理すべき3つの判断基準をお伝えします。
この記事で分かること ・実家を売る決断ができないのはあなただけではない理由
・後悔しないための3つの判断基準
・実際に売却されたお客様がその後どう感じているか
「売ってよかったんかな」── 70歳のお客様がつぶやいた一言
先日、ご実家の売却が無事に終わったお客様を、最後に車で駅までお送りしたときのことです。
私が「お疲れ様でした」と声をかけたところ、そのお客様がぽつりとおっしゃいました。
「売ってよかったんかな」
後悔とも取れる一言でした。
5年間、毎月通い続けた家
今回のお客様は70代の女性、Nさんです。岐阜市にお住まいで、稲沢市にあるご実家をずっと空き家のまま管理されていました。
建物は築50年以上。
手を入れなければ住める状態ではなく、現実的には解体するしかない状況です。ご本人も最初から分かっていました。
それでもNさんは、5年間毎月、岐阜から稲沢まで草刈りと空気の入れ替えのために通い続けていたのです。
それだけで、どれほどその家を大切にされていたか伝わってきます。
しかし70歳を過ぎて、体力的に毎月通うのがしんどくなってきた。
お子さんも引き継ぐ予定がない。
Nさんは「いよいよこのままではいけないと思って」とご相談にいらっしゃいました。
ただ、こうもおっしゃっていました。
「でも手放すことは、実は迷っています」
一緒に状況を整理していった結果
最初のご相談で、私はNさんと一緒に状況を整理していきました。
・これからも定期的に管理しに来ることはできるか?
・お子さんやご親族が引き継いで使う予定はあるか?
・賃貸に出して活用することはできるか?
・このまま放置したら近隣の方にご迷惑をかけないか?
1つ1つ確認していくうちに、「残していい理由がどこにもない」ということが、Nさんの中で整理されていきました。
私が「売った方がいいですよ」と言ったわけではありません。
一緒に考えていった結果、Nさんご自身で答えを出されたのです。
「もう売却してもいいですね」
答えは最初からNさんの中にありました。
ただ、1人で抱えているとなかなか整理できない。それだけのことだったのです。
売却完了、そしてあの一言
最初のご相談から約2ヶ月後、境界確定の測量を行い、建物を解体し、運よく近隣の方に買っていただけたため、売買の手続きもすべて完了しました。
そして最後、車で駅までお送りしたときにNさんがつぶやいた言葉が、冒頭の「売ってよかったんかな」でした。
私の頭の中では、瞬時にこういう整理ができていました。
・毎月岐阜から通うのはもう体力的に無理
・お子さんも引き継がない
・築50年以上で建物は老朽化している
・放置したら近隣に迷惑がかかる可能性がある
だから「売るという判断は間違いなく正解だった」と思いました。
でも、それをそのまま口にするのはやめました。
論理的に正解でも、Nさんが聞きたかったのはそういうことではなかったからです。5年間毎月通い続けた家がなくなるのです。「売ったのは正解ですよ」の一言で片付けていい話ではありません。
だから私は何も言いませんでした。ただ一緒に、少しの間黙っていました。
後悔しないために整理すべき3つの判断基準
実家を手放そうかどうか迷ったとき、以下の3つを正直に考えてみてください。
判断基準1:これからもずっと維持管理に通えるか
空き家は、定期的に通って風を入れ、草を刈り、近隣への挨拶も含めて管理し続ける必要があります。今はできていても、5年後、10年後も同じペースで通えるかどうかを考えてみてください。
Nさんのように体力的な限界がくることは誰にでもあります。
判断基準2:将来、誰かが引き継いで住むか
お子さんやご親族に「将来住む予定はあるか」を確認してください。
「いつか使うかもしれない」は、多くの場合「使わない」のと同じです。
引き継ぐ人がいないなら、空き家として放置される期間が長くなるほど、建物の劣化が進み、維持にかかる費用も増えていきます。
判断基準3:そのまま放置して周囲に迷惑をかけないか
空き家を放置すると、雑草の繁茂、害虫の発生、建物の倒壊リスクなど、近隣にご迷惑をかける可能性が出てきます。
自治体から「特定空家」に指定されると、固定資産税が最大6倍に跳ね上がるケースもあります。
空き家の固定資産税が6倍になる仕組みについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。 空き家を放置すると固定資産税が6倍に!専門家が解説
3つとも「NO」なら、答えはもう出ている
この3つの質問に正直に向き合ったとき、「残していい理由がない」と気づいた方は、最終的に皆さん前に進んでいます。
そして私の経験上、確定申告のタイミングなどで久しぶりにお客様とお話しする機会がありますが、皆さんすっきりした表情でこう言ってくださいます。
「あの時売ってよかった」「売れてよかった」
ご相談の時点でしっかり整理をして、熟慮の末に出した答えです。私が担当したお客様で、その判断を後悔している方はいません。
そして今回のNさんの土地にも、これから新しいご家族が家を建てます。5年間誰も使っていなかった土地が、新しく生まれ変わるのです。
Nさんのご両親が大切にされた場所が、また誰かの新しい大切な場所になる。それでいいのです。
実家の売却を決断できない方へ
実家を売る決断ができない。その気持ちは当然です。
ただ、この3つを正直に考えてみてください。
- ご自身でこれからもずっと維持管理に通えるか
- 将来、家族や親族の誰かが引き継いで住んでくれるか
- 放置して周りに迷惑をかけないか
答えはきっと、もうあなたの中にあるはずです。
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