市街化調整区域の農地は売れない?稲沢市で相続した田・畑の売却方法

※この記事で紹介する相談事例は、プライバシー保護のため、地域や土地・建物の規模など一部を変更しています。
先日、遠方にお住まいの方から、稲沢市の市街化調整区域にある家と農地を相続した、というご相談をいただきました。
宅地と建物は、一般的な戸建ての規模です。ただ、その周りに、宅地よりずっと広い田畑がまとまって付いていました。
いただいた質問は、大きく三つでした。
「家と農地を一緒に売れますか」
「農地だけが売れずに残りませんか」
「そもそも、誰が買えるのでしょうか」
何とか力になりたくて、土地の名義、農地の区分、宅地に変えられる見込み。
一つずつ調べました。
そのうえで、先に結論からお伝えします。
市街化調整区域の農地は、売れます。売れないわけではありません。 ただ、正直に言うと、現実はかなり厳しいです。ふつうの宅地のようにはいきません。買える人も、売り方も、ぐっと限られます。
「調整区域だから、もう無理だ」とあきらめる必要はありません。
でも、「すぐ売れるだろう」と甘く見ることもできない。
そういう土地です。
そして、もう一つ、正直にお伝えしておきたいことがあります。
土地は、市によって大きく二つに分けられています。市街化区域は、家やお店を建てて街を育てていくと決められた場所。市街化調整区域は、街をそれ以上広げないと決められた場所です。
同じ「農地」でも、どちらにあるかで、話はまるで変わります。
市街化区域の農地は、宅地(家を建てるための土地)に変えて売れます。当社でも、通常どおり売却のご依頼をお受けしています。
一方、市街化調整区域の農地そのものの売却は、現実に相当な手間と時間がかかります。そのため、残念ながら当社ではそのご依頼をお受けしておりません。
ただ、「うちの農地は、どっちなんだろう」がご自身で分からないときや、これからどう動けばいいかは、無料でご相談いただけます。
ご自身の農地がどちらなのか、何を確認すればいいのか。
この記事で、順番にお話しします。
読み終えるころには、見当がつくはずです。
「市街化調整区域の農地は、売れないのでしょうか」
最初の質問が、これでした。
売却そのものが禁止されているわけではありません。
ただ、一般の宅地のように、住みたい人なら誰でも買える土地ではないんですね。
売り方は、大きく二つに分かれます。
- 農地のまま、耕作する人へ売る・貸す
- 農地転用を前提に、住宅の敷地や駐車場など、別の用途で使う人へ売る
「農地転用」というのは、田んぼや畑を、家の敷地や駐車場といった農地以外の使い方に変えることです。
この記事では何度も出てくるので、覚えておいてください。
農地のまま売る場合は、農地法に基づく許可が必要です。
以前は「一定の広さ以上ないと農地を買えない」という決まり(下限面積要件)がありました。
これは廃止されています。
ただ、買った後にその農地をきちんと耕作すること、周りの農地へ悪い影響を与えないことなどの条件は、今も残っています。
つまり、一般の方が「庭として使いたい」「将来何かに使うかもしれない」という理由で農地だけを買うのは、難しいということです。
「家は売れても、田んぼや畑だけ残りませんか」
いちばん心配されていたのが、これでした。
正直に言うと、これは現実に起こります。
家と宅地を買う方が、周りの農地まで取得できるとは限らないからです。
農地を買うための条件を満たせなければ、宅地と建物だけが売れて、田畑が相続した方の手元に残ります。
だから、最初から「全部まとめていくら」と査定するのは危ないんです。
買える人を、三つに分けて考えます。
- 宅地と建物を取得できる人
- 農地を農地として取得できる人
- 農地転用と、市街化調整区域の許可要件を満たせる人
この三つは、重なることもあれば、まったく重ならないこともあります。
農地の部分は、近隣の農家さんや、隣の土地の所有者、今その田畑を耕している方が、引き受けてくれることもあります。
まずはそうした身近なところから当たってみるのが、現実的な場合も多いです。
「調整区域だから、もう無理なんですよね」
ご相談の途中で、こうも聞かれました。
ここは、分けて考えないと、こんがらがってしまいます。
農地かどうかは、登記簿(土地の公式な記録)に書かれた土地の種類だけでなく、実際に耕作されているかという今の状態も含めて判断されます。
市街化調整区域は、街をそれ以上広げないと決められた場所です。新しく建物を建てることや、建物の使いみちを変えることが、原則としてできません。
この二つは、別々の規制なんですね。
だから、農地の話(農地法)と、建物を建てる話(都市計画法)は、分けて確認します。
これは後ほど、もう少し詳しくお話しします。
青地かどうかで、難しさが大きく変わります
農地を調べていくと、「青地」「白地」という言葉が出てきます。
国や市は、「ここは今後も農業を続けていく」と決めた地域を定めています(農業振興地域といいます)。
その中でも、特に農業のために守ると定められた土地が、青地です。
それ以外の農地は、白地と呼ばれます。
青地を農業以外に使うには、農地転用の前に、この枠組みから外す手続きが要ります。
これが、なかなか手ごわいんです。
申請すれば通る、という手続きではありません。
代わりの土地がないか、周りの農地への影響はないか、その先の転用や建築の見込みはあるか。
そういったことを、一つずつ確認されます。
稲沢市の受付は年4回で、締切日の2週間前までに事前相談が必要です。
ここで知っておいてほしいのは、自分の土地が青地かどうかを、覚えておく必要はないということです。地番(登記上の土地の番号)が分かる書類を持って市役所の農務課へ行けば、教えてもらえます。
農地にも「種類」があります
青地でなければ自由に転用できるのかというと、そういう話でもないんです。
農地には、青地・白地とは別に、もう一つの「種類分け」があります。

- 農用地・甲種農地・第1種農地:原則として転用が難しい
- 第2種農地:代わりの土地がないかを確認される
- 第3種農地:原則として許可
正直、ここまで来ると、覚えるのは大変ですよね。
でも、大丈夫です。自分の農地がどの種類かは、農業委員会(農地の売り買いや貸し借りを審査している、市の組織)で確認できます。
大事なのは、「青地・白地」と「この種類分け」は別の物差しで、両方を確認しないといけない、という点です。
片方だけ見て進めると、後で話が止まります。
出典:愛知県「農地の転用」
「農地を、家の敷地にして売れませんか」
これが、一番つまずきやすいところです。
農地を転用できるかどうかと、そこに家を建てられるかどうかは、別の話なんです。
市街化区域なら、農地転用は届出で進みます。それでも、道路にどう接しているか、雨水や排水をどう流すかといった確認が別に要り、届出だけで家が建つわけではありません。
問題は、市街化調整区域の場合です。
市街化調整区域は、そもそも建物を増やさないための区域です。だから、原則として家は建てられません。
農地転用の見込みが立っても、それだけでは建たないんですね。
例外的に建てられるのは、都市計画法の許可(開発許可)に当てはまったときだけです。
市街化調整区域では、誰でも自由に家を建てられるわけではありません。
建てられるのは、たとえば次のような限られた場合です。
- 昔からその地域に住む農家の子や孫が、独立して家を建てる場合(分家住宅)
- 市街化区域と市街化調整区域に分けられた日(「線引き」といいます。稲沢市では昭和45年)より前から、その土地を持っている場合
- もともと宅地だった土地
- 市街化区域のそばで、建物が50以上まとまって建っている区域(稲沢市が条例で指定した区域)
このうち分家や線引き前からの所有は、「誰が」「いつから持っていたか」という、人にひもづいた条件です。
だから、他人が買ってそこに家を建てようとすると、この条件を満たせず、建てられないことが多いんです。
ここが、一番のハードルになります。
比較的間口が広いのは、最後の「条例で指定された区域」です。
人の要件がなく、条件に合えば住宅を建てられる場合があります。
ただ、農用地区域や、まとまった良好な農地の区域は、指定区域から外れています。

出典:稲沢市「市街化調整区域の建築制限」/稲沢市「都市計画法に基づく条例」
「調整区域だけれど、周りに家が建っている」「道路にも接している」。
その理由だけでは、判断できないんです。
建てる人が誰か、その土地をいつから持っているか。そこまで確認して、やっと見通しが立ちます。
ここは、素人判断が一番あぶないところです。だから、売り出す前に、建築を担当する部署へ必ず確認しておきます。
「何から始めればいいですか」
農地を相続したときは、相続登記(亡くなった方の名義を、相続した方へ変える手続き)とは別に、農地のある市町村の農業委員会へ届出が必要です。
農林水産省は、相続発生日からおおむね10か月以内の届出を案内しています。
届け出なかった場合、10万円以下の過料(罰金に似た、行政上のペナルティ)が科される可能性があります。

売却を考えるなら、この順で整理していくと、頭の中がすっきりします。
- 相続登記と、今の所有者を確認する
- 登記事項証明書、公図(土地の形と並びが分かる法務局の地図)、固定資産税の明細を揃える
- 市街化区域か市街化調整区域かを調べる
- 青地かどうかを農務課へ確認する
- 農地区分と転用の可能性を農業委員会へ確認する
- 建物があれば、建築・用途変更の要件を建築担当の部署へ確認する
- 農地のまま売るか、転用を前提にするかを決める
「eMAFF農地ナビ」や「MAP de いなざわ!」という地図で、最初の見当は付けられます。
ただ、地図だけで売却や転用の可否は決められません。地番を示して、市役所へ確認します。
ここまで読んで、「これを全部、自分でやるのか」と気が遠くなった方も、多いと思います。
正直に言えば、大変です。
窓口は農務課、農業委員会、建築の部署と分かれていて、それぞれに事前相談や締切があります。
遠方にお住まいなら、なおさらです。
ただ、いきなり全部を抱え込む前に、まず一つだけ確かめてほしいことがあります。
それは、その土地が市街化区域なのか、市街化調整区域なのか。
ここが分かるだけで、進め方は大きく変わります。
稲沢市で実際に転用へ進む場合は、申請書の提出が毎月月末締切で、許可までは約2か月が目安です。
他法令との調整次第では、それ以上かかることもあります。
田んぼや畑に水を引いたり、水を抜いたりする用水路。あれを地域みんなで維持しているのが土地改良区です。
農地を転用して農地でなくすと、その地区から抜けることになります。
そのときに、これまでの施設の負担分などを精算します。
これが決済金です。
金額は、地区や面積、その地区が過去にやった工事の規模で大きく変わります。
数万円で収まることもあれば、まとまった額になることもあります。
転用の話が具体的になったら、早めに確認しておくと安心です。
出典:農林水産省「農地相続ポータル」/稲沢市「農地移動の手続き」
正直、農地の売却は簡単ではありません
ここまでお話ししてきたとおり、市街化調整区域の農地は、確認することがいくつも重なります。
農地法、都市計画法、青地の除外、農地の種類、建築の許可。どれか一つでも見落とすと、買い手が見つかってから話が止まってしまいます。
だから、正直に言います。この手の土地は、ふつうの住宅地のようには売れません。 そして、売るには相当な手間と時間がかかります。
冒頭でお伝えしたとおり、当社では市街化調整区域の農地の売却依頼はお受けしていません。
中途半端にお預かりして、結局売れずにお待たせするようなことは、したくないからです。
ただ、だからといって、突き放すつもりはありません。
不動産の仕事を28年、査定は5,000件を超えてきました。
宅地建物取引士として現場を歩き、マンション管理士の資格も持っています。
相続がらみの土地も、数多く手がけてきました。
地元・稲沢のことは、地図が頭に入っています。
だから、あなたの農地が、本当に売るのが難しい土地なのか。
それとも市街化区域で、ふつうに売れる土地なのか。
売るとしたら、どこに相談し、どう動けばいいのか。
その見極めと道筋くらいは、お示しできます。
市街化区域の農地であれば、そのまま当社で売却のお手伝いをします。
そして私は、いつも相談される方の側に立ちます。
売れるものを売れないと言ったり、売れないものを無理に勧めたりはしません。
それが、私の立ち位置です。
よくある質問
- 農業をしていない人でも、農地を相続できますか
相続による取得はできます。
ただし、相続登記とは別に、農業委員会への届出が必要です。
売ったり貸したりするには、あらためて農地法上の手続きが要ります。
- 青地は絶対に転用できませんか
-
原則として、農地以外への利用は厳しく制限されています。除外の要件をすべて満たし、その先の農地転用や建築許可の見込みもある場合に限って検討されるため、個別の相談が必要です。
- 農地だけ売れないときは、どうしますか
近隣の農家や、今の耕作者、農業委員会、農地を貸し借りする公的な窓口(農地中間管理機構)などへ相談する方法があります。
宅地と農地を無理に同じ買主へ売ろうとせず、分けて考えたほうが進む場合もあります。
売る前に、四つの区分を順番に確認します
市街化調整区域の農地は、売れない土地ではありません。ただ、買う人と使い道が限られる土地です。
だから、売却を考えるときは、この順に確認します。
- 市街化区域か、市街化調整区域か
- 青地か、白地か
- 農地区分(農用地・甲種・第1種・第2種・第3種)
- 建築の許可要件
調べずに価格を決めてしまうと、後から必ず話が止まります。
とはいえ、いきなり全部を調べるのは大変です。
まずは、あなたの農地が市街化区域なのか、市街化調整区域なのか。
売れる見込みがあるのか。
そこを見極めるところから、ご相談ください。
遠方にお住まいで、現地のことが分からなくても、登記簿と固定資産税の明細くらいがあれば、話は始められます。
「うちの田んぼは、どっちなんだろう」。その一枚の疑問からで、大丈夫です。
参考:一宮市で農地を相続した場合
一宮市でも、確認する順番はここまでと同じです。ただ、窓口が変わります。
- 市街化区域か市街化調整区域か:「138マップ」で確認
- 青地かどうか:地番の分かる登記簿などを持って農業振興課へ
- 農地転用:農業委員会へ
- 建築・用途変更:建築指導課の開発審査グループへ

