実家売却の値下げ交渉は断っていい|応じる場面と断る場面の見分け方

実家を売りに出して、やっと購入の申し込みが入った。ところが書面を開いてみたら、大きな値下げの希望が書いてあった。受けるべきか、断るべきか。結論から言うと、断っていいです。
値下げの交渉には、応じていい場面と、断っていい場面があります。
そして多くの方が、断っていい場面で下げてしまって、あとから後悔されています。
この記事では、その見分け方をお話しします。県外にお住まいの方が相続された稲沢市の実家で、70万円の値下げを断ったら5日後に満額で買いたいという申し込みが入った、という実際のケースも交えます。

▶ この記事の内容は動画でも解説しています(約9分)
その値下げ交渉は、断っていいです

まず、いちばん大きな不安から片付けます。
値下げの交渉を断っても、それで話がすべて終わるわけではありません。
購入の申し込みは、契約ではありません。
買いたい人が「この金額でどうですか」と希望を出してきた段階です。
売る側が「その金額では売りません」と返すことも、当然できます。
そこで買い手が引き下がることもあれば、金額を上げて出し直してくることもあります。本当に欲しい人は、戻ってきます。
厄介なのは、自分が頼んでいる不動産会社の担当者が「この条件で応じましょう。これを逃すともう売れませんよ」と強く言ってくるケースです。
そう言われると、つい応じてしまいます。そして、あとで大きく後悔することになります。
応じていい時と、断るべき時があります

不動産を売ったあとに後悔したこと、というアンケートの上位には、いつも同じものが出てきます。「焦って安易に値下げに応じてしまった」です。
それくらい、よくある後悔なんです。
ただ、値下げの交渉がすべて悪いわけでもありません。受けた方がいい場面もあります。
大事なのは、今の自分がどちらの場面にいるのかを、その場で見分けることです。順番に見ていきます。
断るべき場面でも下げてしまう、2つの理由

なぜ、断っていい場面なのに下げてしまうのか。理由は2つあります。
理由1|買い手が逃げる気がして怖い

これがいちばん多いです。
せっかく来た1件の申し込みを断ったら、次はいつ来るか分からない。
その不安に耐えられなくて、金額を下げてしまいます。
とくに空き家になっている実家は、「このまま売れ残ったらどうしよう」という気持ちが常にあります。近所に草の伸びた空き家や空き地があると、余計に不安になります。
理由2|不動産会社の側にも、早くまとめたい事情がある
こちらは、あまり語られていない話です。
不動産会社の仲介手数料は、成功報酬です。売買契約がまとまって、引き渡しまで進んで、はじめて受け取れます。逆に言えば、話がまとまらなければ1円も入りません。
だから、目の前に来た申し込みを早くまとめたい、という気持ちが働くことがあります。
不動産会社が悪い、という話をしたいのではありません。ただ、「下げましょう」と背中を押してくる担当者が、いつも売る側の味方とは限らない。ここを知っておくだけで、判断のブレがなくなります。
受けてもいい場面

では、応じてもいい場面から。次の2つに当てはまるなら、受けることを考えていいと思います。
- 周りに似た売り物件が多く、次の買い手がいつ現れるか読めないとき
- 提示された金額が、もともとの査定の範囲内に収まっているとき
1つ目は、要するに競争相手が多い状況です。
同じような広さ・価格の家が近所にいくつも出ていると、買う側には選択肢があります。
ここで粘っても、次が来る保証はありません。
2つ目は、「値下げ後の金額でも、相場から外れていない」という状態です。もともと相場の上のほうで売り出していれば、少し下げても納得できる範囲に収まります。
この2つが揃っているなら、無理に断って波風を立てるより、受けてしまった方がいいこともあります。
断っていい場面

逆に、断っていい場面はこちらです。
- 適正な価格で売り出していて、問い合わせや内見がちゃんと入っているとき
- 値下げを求める根拠が薄いとき(ダメ元で言ってきている感じのとき)
問い合わせや内見が続いているということは、その価格でも見に来る人がいるということです。市場が「高すぎる」と言っていないわけですから、慌てて下げる理由がありません。
もう1つ、値下げの根拠が薄い方も、たまにいらっしゃいます。
不動産に慣れていて、ダメ元でとりあえず入れてみよう、という感じの方です。
こういう申し込みに、慌てて条件を受ける必要はありません。
「適正な価格で出せているか」は、自分でも確かめられます
ここで「そもそも自分の売り出し価格が適正なのか分からない」という方が多いと思います。
成約価格(実際に売れた値段)は、公的なサイトで自分でも調べられます。手順はレインズ・マーケット・インフォメーションで成約価格を確認する方法にまとめました。
ちなみに、最初に高すぎる価格をつけると、あとで値下げに追われます。 そうなると、結果的に相場より安く着地することがあります。この流れは売却価格が低くなってしまう3つの理由で詳しく書いています。
いくらまでなら妥当か(決まった正解はありません)

「では、いくらまでの値下げなら受けていいんですか」とよく聞かれます。
ここは数字で言い切れたら簡単なんですが、正直、決まった金額の正解はありません。
なお、この値下げの申し込みのことを、不動産の現場では「指値(さしね)」と言います。
買いたい人が自分から値段を指定してくる、という意味です。
稲沢市あたりの感覚では、初回から100万円超の値下げはそうそうありません
金額の感覚は、エリアによってまるで違います。東京あたりの何千万、何億という不動産と、稲沢市の不動産とでは、そもそも値段の桁が違いますから。
その上で、この愛知県の感覚で言うと、いきなり100万円を超えるような値下げ交渉は、そうそうあることではありません。
これが不動産に詳しくない一般の方から出てくるならまだ分かります。
ただ、間に不動産の仲介業者が入っていて、そのうえで持ってくる場合もあります。
値下げの交渉を通すかどうかは、1つの技術なんです。相場の範囲に収まっているなら、あとはその時々の状況を見ながら相談して決めていくことになります。
「なぜ応じる必要があるんですか」と聞いてください

自分が頼んでいる不動産会社の担当者から「値下げに応じましょう」と言われたときの、実際の対処です。
まず、この一言を聞いてみてください。
「なぜ応じる必要があるんですか」
その上で、なるほどと納得できる根拠が返ってくるなら、応じていいと思います。
たとえば、こういう答えです。
- 近隣に同じ条件の物件が何件も出ていて、内見の数が実際に落ちている
- 提示額が査定の幅の中に収まっていて、この価格でも手取りの計画が崩れない
- 買い手の資金の裏付けが取れていて、契約から引き渡しまで確実に進められる
逆に、これといった根拠がなく、ただ「逃がすともったいないですよ」と言うだけだったら。それは売る側のことを考えてくれていないかもしれない、と思っていいくらいです。
実例|70万円の値下げを断ったら、5日後に満額で戻ってきた

実際に当社で担当したケースです。
相談者は県外にお住まいの方で、相続された稲沢市の実家を売られる方でした。
遠方のため現地には来られず、ほとんどお任せという状態でした。
売却の準備に3か月かかり、販売を始めて1か月半ほど経った頃、購入の申し込みが入りました。ただ、書面には70万円の値下げが書いてありました。
断った理由は、値下げしないと買えない事情がなかったからです

間に入っている仲介業者さんに「なぜ70万円の値下げなんですか」と聞きました。
返ってきた答えは、「これから家を建てるから、安く買えるなら下げてほしい」でした。
つまり、その金額を下げないと買えない、という事情ではなかったんです。
加えて、周りに代わりになるような物件もないことが分かっていました。
そこで売主様には、自信を持ってこうお伝えしました。「これは断った方がいいですよ。本当に欲しかったら戻ってきますから」
売主様はだいぶ悩まれていました。私も経験上、頭では分かっているので「大丈夫ですよ、70万円あったら旅行にも行けますし、ご家族で美味しいものも食べられますよ」と、逆の方向から説得していました。
結果は、5日後でした。間に入っている不動産会社さんから「満額で買いたいです」という申し込みが入りました。
正直、5日は長かったです。私も言った手前、内心はドキドキしていました。
もしあのとき慌てて値下げに応じていたら、手元に残る金額は随分違っていたはずです。
県外にお住まいの方の売却で、当社が代わりに動いていること
このケースのように、遠方にお住まいで現地に来られない方の売却では、こちらで代わりに動く場面が多くなります。
内見の立ち会い、解体業者の相見積もりと立ち会い、現地の様子の撮影と報告。実際にどこまでやっているかは、解体3社の相見積もりを代行し、担当者の説明動画まで撮影して送った事例に書きました。
現地に来られないからこそ、判断の材料はこちらで揃えます。そのうえで、決めるのは売主様です。
よくある質問

- Q. 値下げ交渉を断ったら、その買い手はもう戻ってこないのではありませんか。
戻ってくることもあれば、そのまま離れることもあります。
ここは正直、どちらもあります。
ただ、判断の材料になるのは「値下げしないと買えない事情があるかどうか」です。
資金の都合で本当に届かない方は離れますが、少しでも安く買えたら、という理由の方は戻ってくることが多いです。
- Q. 断ったあと、値下げに応じておけばよかったと後悔しませんか。
そう思われる方もいらっしゃいます。
だからこそ、断る前に「なぜ応じる必要があるのか」を担当者に確認しておくことをおすすめしています。
根拠を聞いたうえで断ったのなら、判断の理由が自分の中に残ります。
何となく断るのが、いちばん後悔しやすいです。
- Q. 何割までの値下げなら普通、という目安はありますか。
決まった目安はありません。
エリアによって価格の桁が違いますし、売り出しからの経過や問い合わせの数によっても変わります。
「相場の範囲に収まっているか」で見ていくことになります。
- Q. 担当者が「下げましょう」としか言わない場合、どうすればいいですか。
-
理由を聞いても納得できる説明が出てこないなら、一度立ち止まってください。媒介契約には期間の区切りがあります。会社を変えるという選択肢も含めて考えられる場面です。契約の種類による違いは専任媒介と一般媒介の成約率の差にまとめています。
まとめ

最後に整理します。
- 値下げの交渉が来ても、断っていいです。
- 受けた方がいい時もあれば、断っていい時もあります。
- 明らかに話にならない金額もありますが、「これが目安」という決まった金額はありません。
では、どう見極めるのか。ここはもう、経験の部分になります。だからこそ、経験のある、信頼できる不動産会社と担当者を選ぶことにつきます。
大した根拠もなく「受けた方がいいですよ」と言われて、そのまま応じてしまったら。
その差額は、丸ごと売主様の手取りから消えます。
同じ家でも、誰に任せるかで手元に残るお金が変わります。
だからこそ、最初の不動産会社選び、担当者選びを慎重にしてほしいです。
相続した実家の売却全体の流れは相続した空き家を売る流れ|売る前から税金まで13の不安を整理にまとめてあります。今どの段階にいるかを確かめたい方は、こちらから見てください。
売却をするかどうかまだ決めていない段階でも、相続した実家・空き家のご相談からお声がけいただければ、今の状況を一緒に整理します。

