相続した実家を解体せず売却|売り出す前に同じ町内の会社へ決まった名古屋市の事例

名古屋市で相続した実家を解体せず売却した事例を紹介する、手描き風のブログアイキャッチイラスト
佐藤高樹

執筆者:佐藤高樹(稲沢あんしん不動産 代表)
宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)/業界28年・査定実績5,000件超
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この事例のお客様(Fさん)

  • 売主:名古屋市にお住まいのFさん
  • 売ったもの:名古屋市内の戸建。ご両親から相続した家で、Fさんご自身は住んでいませんでした
  • 買主:同じ町内の会社
  • きっかけ:知り合いの方からのご紹介(「相続の手続きに詳しい不動産会社がある」と聞いて)
  • 結果:解体せず、更地にもせず、現況のまま売却。契約から約1ヶ月でお引き渡ししました

先にこの事例の結論を書いておきます。相続した親の家は、壊してから売るものだと思われがちです。でも今回は、解体費を1円もかけず、建物が付いたままで売却できました。買主は、同じ町内の会社。正式に売り出す前に、話がまとまりました。

「親の家を相続したけれど、住む予定はない。管理もこれ以上は大変」。そんな状態の家をどう手放すか、の一つの答えになる事例だと思います。私は不動産の仕事を28年やっています。この取引で考えたこと、実際にやったことを、正直に書いてみます。

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ご相談のきっかけ

明るい相談室のテーブルで、不動産会社の担当者が間取り図と家の写真が載った資料を開き、身振りを交えて説明している場面。相続した実家の売却を考えるお客様が、手を組んで落ち着いた表情で耳を傾けています。観葉植物と窓の外の緑がやわらかい、手描き色鉛筆タッチのイラストです

Fさんは、知り合いの方からのご紹介でした。「相続の手続きに詳しい不動産会社がある」と聞いて、ご連絡をくださったそうです。

ご両親が住んでいた名古屋市内の家。ご両親が亡くなられて相続したものの、Fさんの住まいは別にあります。誰も住まない家の管理を続けるのは、思っている以上に大変です。それで、処分の方向で相談に乗ることになりました。

まず整理したのは、売ることより前の話です。相続の登記はどう進めるか。司法書士の先生に流れをまとめてもらい、順番を固めるところから始めました。「まだ登記も終わっていないから相談できない」と思っている方が多いのですが、逆です。登記の前から一緒に整理した方が、あとの手戻りがありません。

この家の問題と、売り方の選択肢

築40年ほどの木造2階建ての空き家の前で、不動産会社の担当者が外壁を指さしながら建物の傷み具合を説明し、お客様が屋根を見上げて考え込んでいる現地確認の場面。周囲の住宅街や電柱まで描き込んだ、手描き色鉛筆タッチのイラストです

建物は昭和60年築。中にはご両親の家財がそのまま残っていました。さらに現地をよく見ると、お隣の建物の一部が、こちらの敷地に越境していることも分かりました。古い住宅ローンの担保の登記も残ったままです。

この状態からの売り方を、Fさんと一緒に並べました。

選択肢メリットデメリット
解体して更地で売る買い手の幅が広がる解体費が先にかかる
現況のまま売る売主の負担がほぼゼロ買い手が限られ、事情の説明が必要
業者に買い取ってもらう早く確実に手放せる市場で売るより価格が下がりやすい
今回検討した3つの売り方。実際に業者買取の打診もして、比較材料を揃えました

机の上の比較だけではなく、業者の買取も実際に打診して、数字を並べました。選択肢は、想像ではなく実物で比べる。ここは手間を惜しみません。

見積もり比較の詳しい経過と、きょうだいで分ける相続(換価分割)の話は、こちらの記事に書きました。この記事では「売り方の決め方」に絞ってお話しします。

買主は、同じ町内にいました

隣の建物の一部がこちらの敷地に越境している「今の状態」と、将来建て替える時に直すという約束を「覚書」という書面にして整理する流れを表した手描き風の図解です。壊さなくても書面で解決できることを示しています。
越境の整理の図解。今すぐ壊して直さなくても、「将来建て替える時に直す」という覚書のかたちで整理できます

転機は、Fさんがご近所へご挨拶に回ったときでした。会話の中で、同じ町内の会社が「ちょっと興味がある」と。どちらかが売り込んだわけではありません。ご挨拶の場の何気ない会話から、話が生まれたんです。

実は、その土地の近くにいる方や会社は、いちばん有力な買主候補です。土地の事情を知っていて、使い道も具体的に描ける。ただし、顔見知り同士の話だからこそ、あいまいなまま進めると後でこじれます。ここからが私の仕事でした。

やったことは3つです。

  • 越境の整理:お隣の建物がこちらへはみ出している件を、覚書という書面にしました。今すぐ壊すのではなく、「将来建て替えるときに解消する」という約束を、次の持ち主にも引き継がれる形で残す方法です
  • 残置物の相見積もり:家に残った家財の片付けは、4社から見積もりを取り比較。いちばん安い会社に決めました
  • 相続と担保の後始末:相続登記の段取りと、残っていた古い住宅ローンの担保の登記を消す手続きを、お引き渡しまでに間に合う形で組みました

ちなみに、この覚書の相手方であるお隣も、ちょうど相続の手続きの最中でした。二つの家の相続が並行して動く中での書面調整は、正直、気を使いましたね。

価格の考え方=「条件と引き換えの落としどころ」

価格は、金額の駆け引きで決めたのではありません。条件とセットで決めました。

買主側から見ると、この取引には持ち込みにくい条件がいくつもあります。建物は壊さずそのまま。境界も越境も、覚書での整理のまま現状で引き受ける。普通の買主なら嫌がるところです。

逆に売主のFさんから見ると、解体費も片付けの手間の大半も、かけずに済む。つまり「売主が出費と手間を省ける分、価格で少し譲る」。双方が納得できる、いちばんすんなりまとまるところに着地させた金額なんです。

今回、Fさん側にかかった費用と、かからずに済んだ費用を並べておきます。

かかった費用かからずに済んだ費用
残置物の片付け(4社比較で圧縮)建物の解体費
相続登記・担保の抹消などの登記費用測量費(境界は現状のまま覚書で整理)
仲介手数料(契約時と引き渡し時の2回に分けて)更地にした後の草刈り等の維持費
実額は物件ごとに違うため、金額は個別のご相談でお伝えしています

どれを・いつ払うのかは、最初の資金計画で全部お見せしてから進めます。ご相談と査定は無料です。まだ売ると決めていない段階からでも大丈夫です。

結果と、この事例から言えること

窓から光が差し込む部屋で、不動産会社の担当者とお客様が、ひもで結ばれた契約書類の束を両手でていねいに受け渡ししている場面。二人とも目を細めて微笑んでおり、売却の手続きが無事に終わった安心感が伝わる手描き色鉛筆タッチのイラストです

この家も、ポータルサイトに載せて売り出す前に、買主が決まりました。契約から約1ヶ月で決済・お引き渡しまで進み、Fさんは解体費をかけることなく、管理し続けていた親の家を手放せました。買主の会社は、建物を残したまま、使い道を自分たちで決められる形で引き継ぎました。

同じような状況の方に、この事例からお伝えできることは3つです。

  • 解体を急がない。「壊してからでないと売れない」は思い込みです。現況のまま買える相手がいれば、解体費はまるごと浮きます
  • 近くの方・会社は、最有力の買主候補。売り出しの前に、ご縁と会話の中に答えがあることがあります
  • 越境や残置物は、売れない理由にはなりません。覚書や相見積もりで、一つずつ整理できます

ただし、ご近所同士・顔見知り同士の取引ほど、間に入る人間の段取りが大事です。書面をきちんと作り、あいまいさを残さない。そこだけは、プロに任せてください。

よくある質問

Q. 相続した実家は、解体してからでないと売れませんか?
いいえ。今回のように建物付き・現況のままで売れるケースがあります。解体費を先にかける前に、現況で買える相手がいないかを確かめる方が、売主の負担は小さくなります。

Q. 近所の方や会社に直接売るのは、ありですか?
ありです。ただし顔見知り同士だからこそ、価格の根拠・境界や越境の整理・契約書面は第三者がきちんと作った方が、双方のためになります。当社はその段取り一式をお引き受けします。

Q. 隣の建物がはみ出している(越境がある)家でも売れますか?
売れます。今回は「将来の建て替え時に解消する」という覚書を、次の持ち主にも引き継がれる形で交わして整理しました。壊さなくても、書面で解決できる場合があります。

Q. 相続登記がまだ終わっていなくても相談できますか?
できます。今回も、相続登記の流れの整理から一緒に始めました。売却と登記の段取りを同時に組んだ方が、全体が早く進みます。

さいごに

相続した親の家は、持っているだけで固定資産税と管理の手間がかかり続けます。かといって、慌てて解体するのも違う。売り方の選択肢を実物の数字で並べて、いちばん負担の少ない道を選ぶ。それが私の仕事です。

最初の一歩は、家がどこにあって、今どういう状態か。それを聞かせていただくところからで十分です。まだ売ると決めていない、という段階からでも大歓迎です。

稲沢あんしん不動産のロゴ

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