住友不動産ステップ手付金詐欺400万円|事件の手口と持ち回り契約を解説

住友不動産ステップで起きた、手付金400万円の詐欺事件を取り上げます。
住友不動産グループの会社が、元従業員の逮捕と再発防止策を実名で公表しました。
この事件は、プロの不動産会社も見抜けなかったと報じられています。
ただ、契約の場で売主さん本人に会うことで、防げた可能性はあります。
動画で省いた時系列、会社の対応、持ち回り契約の仕組みも補いながら、順番に見ていきます。
手付金詐欺の手口と、契約日に売主さんへ会う意味を動画でも解説しています。
まず何が起きたのか|住友不動産ステップの公式発表

住友不動産ステップ株式会社が2026年5月12日に公表した文書には、次のような内容があります。
元従業員が在籍中に、物件購入を希望する不動産会社に対して、売却意思のない所有者の物件を、会社を通さず個人的に紹介した。
そして、架空の売買契約書を締結したうえで、手付金400万円を不正に受け取った疑いで逮捕された、というものです。
土地も所有者も実在していた一方で、所有者には売る意思がなかったと会社は説明しています。
買う側から見れば、「大手不動産会社の担当者が紹介している」「土地は実在する」「契約書もある」となれば、普通は信用しやすいですよね。
今回の怖さは、会社の看板と実在する土地が、正規の案件に見せるために使われた疑いがあるところです。
事件の時系列|測量が始まらないことが発覚のきっかけ

広島テレビの独自取材を引用した報道では、2024年ごろ、広島市内の土地について約6,000万円の取引話が持ちかけられたとされています。
その後、2025年3月ごろに被害に遭った不動産会社が「測量が始まらない」と不審に思い、問い合わせたことが発覚のきっかけになったと報じられています。
測量とは、土地の境界や面積を確認する作業です。予定していた測量がいつまでも動かず、取引相手を確認して初めておかしいと分かった、という流れです。
この細かな時系列は、直接確認できない元報道を引用した二次資料に基づくため、「報道では」と区別します。
会社は、元従業員を2025年5月に懲戒解雇していたこと、逮捕が2026年5月11日であったことを公表しています。
積水ハウスの地面師事件と、今回の事件は何が違うのか

こういう事件が起きると、「積水ハウスの地面師事件と同じではないの」と思う方もいると思います。
ここは混ぜずに見ておきたいところです。
積水ハウスの地面師事件は、東京都品川区西五反田の土地をめぐり、真の所有者になりすました者らとの取引で詐欺被害に遭った事件です。
積水ハウスの総括検証報告書では、売買代金などとして約63億円を交付し、最終的な被害額は約55億5,900万円と整理されています。
地面師の場合は、架空の名前や肩書きを用意し、他人の土地を、まるで自分が所有者であるかのように売ろうとします。
今回の住友不動産ステップの公表事案は、会社の説明によれば、元従業員本人が会社を通さずに、実在する土地と所有者を利用し、架空の売買契約書を作った疑いがあるものです。
つまり、地面師は主に「所有者本人になりすます」。
今回の事案は「大手不動産会社の看板と、正規の案件に見える書類を私的に使った疑い」が中心です。
相手が大手の社員であり、買う側もプロだったからこそ、信用されてしまった。
この違いが、今回いちばん怖いところだと私は思います。
積水ハウスの件では、精巧な偽造書類や所有者のなりすましが使われました。
今回の事案では、会社の公式発表にある「売却意思のない所有者」「架空の売買契約書」「手付金400万円」という言葉を、一つずつ読む必要があります。
出典:積水ハウス総括検証報告書
ここで普通の不動産取引の流れを確認します

今回どこがおかしかったかを理解するには、普通の売買がどう進むかを知っておく必要があります。
不動産の売買には、大きく二つの区切りがあります。
- 契約の日:重要事項説明を受け、売買契約書に署名し、手付金を払う日
- 決済・引渡しの日:残りの代金を払い、鍵を受け取り、登記の手続きを進める日
手付金は、契約の場面で払うお金です。売買代金の一部を先に渡す意味があり、簡単に契約をやめないための約束にもなります。
普通であれば、契約の場には売主さんと買主さんが顔を合わせ、宅地建物取引士が重要事項説明をします。
重要事項説明とは、その土地や建物の権利関係、法令上の制限、契約解除の条件などを説明するものです。
そのあとに契約書へ署名・押印し、手付金を渡します。
今回400万円が受け取られた疑いがあるのも、この「契約」の段階でした。
不動産売却で知らないと困る専門用語10選では、手付金の役割を基本から説明しています。不動産売却の流れと期間では、契約から決済・引渡しまでの全体像を確認できます。
今回どこを騙されたのか|持ち回り契約の穴

今回のケースでは、「持ち回り契約」という方法が関わってきます。
持ち回り契約とは、売主さんと買主さんが同じ場所で会わず、仲介会社が契約書をそれぞれのところへ持って行き、署名・押印をそろえる形です。
売主さんが遠方にいる、予定がどうしても合わない。そんな事情でも使われます。
ただ、売主さんと買主さんが会わない分、本人の売る意思を会話の中で確かめる場面が減ります。
今回のように、所有者には売却意思がなかったとされる事案では、この差が大きくなります。
購入した取材記事では、会社が個人の歩合賞与を廃止し、チーム担当へ切り替える背景として、個人の営業成績を重視する仕組みや、両手取引をめぐる業界構造にも触れています。
両手取引とは、同じ仲介会社が売主側と買主側の双方から仲介手数料を受ける取引です。
ただし、歩合制や両手取引が今回の事件の原因だと断定することはできません。
会社が事件を受けて、管理体制の見直し、歩合賞与の廃止、チーム担当化、地域をまたぐ異動まで公表したことは事実です。
月内契約には現実がある|だからこそ売主さんに会う段取りを考える

実務では、売主さんと買主さんの予定を合わせにくく、月内に契約をまとめたい事情が重なることがあります。
月内契約とは、その月の最終日までに売買契約を結ぶことです。
会社や部署によっては、月ごとの売上や契約件数、評価の締め日があります。
すべてを個人のノルマと決めつけることはできませんが、営業側に月末の事情はあります。
物件が気に入っていて、ほかの買主さんとの競争があるなら、早く契約する必要がある場面はあります。
売主さんからすれば、早く、確実に契約してくれる買主さんを望むのは当然です。
買主さんにも仕事があり、売主さんにも都合があります。担当者さんから「契約のときは会わなくても、最後の引渡しで会えれば大丈夫です」と説明されれば、初めて不動産を買う方は「そういうものなのかな」と思いますよね。
ただ、売主さんを待たせすぎれば、別の買主さんに決まるかもしれません。
契約を急ぐことと、売主さん本人に会って手付金を渡すこと。
その両方を日程に入れるのは簡単ではありません。
だから私は、契約を先延ばしにしてくださいとは言いません。気に入った物件なら、売主さん・買主さん・担当者さんで日程を調整して、多少無理をしてでも直接会える契約の場を作ることが必要になると思います。
正直、完全には防げません。でも今回なら確認できたことがあります

ここが一番大事なところです。
大手の看板、実在する土地、偽造書類がそろった案件を、一般の人が100%見抜くのは現実的ではありません。
ただ、今回のケースに限って言えば、契約の場で売主さん本人に直接会うことで、防げた可能性があります。
本人に会えば、「なぜ売却されるのですか」と会話できます。売却の意思、書類の内容、手付金を受け取る人が目の前で一致しているかも確認しやすくなります。
もし持ち回り契約と言われたら、担当者にこう聞いてみてください。
- 「契約の日は、売主様にもご同席いただけますか」
- 「持ち回りにする理由と、売主様本人の意思をどう確認しましたか」
- 「手付金は、誰の口座へ、どの名義で支払いますか」
- 「決済・引渡しの日は、誰が立ち会いますか」
売主さんに会えない事情がある場合もあります。そのときは、会えないから即中止ではなく、本人確認を誰がいつしたか、司法書士さんによる登記書類の原本確認はいつか、手付金をどう安全に扱うかまで確認します。
まとめ|事件から分かる三つのこと

住友不動産ステップの手付金400万円事件は、実在する土地、売却意思のない所有者、大手会社の看板、架空の契約書が重なった疑いのある事案です。
積水ハウスの地面師事件とは手口が違いますが、本人確認は大手やプロ同士の取引でも簡単ではありません。
持ち回り契約は普通に使われる方法です。
ただ、売主さんに会わない分だけ、確認の方法を具体的に聞く必要があります。
早く契約してもらいたい売主さん、月内にまとめたい仲介会社、買主さんの仕事。
その現実を踏まえて、会える日を作るバランスが必要です。
今回の事件を受け、住友不動産ステップは個人の歩合賞与を廃止し、チームで顧客を担当する体制へ変えると公表しました。
相談する側には、担当者が変わる、関係が薄くなる不安もあります。
会社の規模も、一つの安心材料です。
ただ、最後に一緒に進めるのは会社の看板ではなく担当者さんです。
相談への向き合い方、説明の分かりやすさ、困ったときにきちんと動いてくれるか。
誰に任せるかで、取引の安心感は変わります。
ホームページや口コミ、担当者さんの話し方も見てください。
会社の規模だけで決めず、ご自身のためにしっかり相談に乗ってくれる担当者さんを選んでください。
よくある質問

- 持ち回り契約は危険ですか
持ち回り契約だけで危険とは言えません。
売主さんが遠方にいるなど、実務上の理由で使われます。
本人確認、手付金の受取人、決済日の立会いを具体的に聞き、納得できる形にしてください。
- 手付金は売主本人に直接渡さないといけませんか
取引によって異なります。
仲介会社の預り金口座を使うこともあります。
誰に、どの口座へ、何の名目で払うのかを、契約書と領収書で確認してください。
- 月内契約を求められたら断ってよいですか
断れます。
契約書と重要事項説明書を確認する時間は必要です。
営業側の締め日だけで、買う側の確認を省かないようにしてください。
- 売主さんに会えない場合は契約できませんか
会えない事情があり、本人確認や登記書類の確認が適切に行われるなら契約は可能です。
不安が残るなら、会えない理由と確認の方法を聞き、契約日を調整できないか相談してください。

